社会福祉士のジョジョです。あなたは、8050問題という言葉を知っているでしょうか。8050問題とは、高齢化したひきこもりが、親の介護をすることになり、親子の共倒れや様々な問題が起こるといわれている現象です。
内閣府の調査では、40歳以上の中高年ひきこもりが61万人という驚くべき結果がでており、8050問題に直面する世帯が多数でてくると言われています。
本記事では、引きこもりの高齢化の原因や支援を、実際のデータをもとに紹介します。
引きこもりと8050問題
8050問題、という言葉は2000年ごろから使われていましたが、世間的にしられるようになってきたのは最近です。nhkでドキュメンタリーが放送されたり、センセーショナルな事件が注目されたりと、近年になって特に認知されるようになってきました。
団塊の世代が定年を迎え、高齢化社会が現実味をおびてきたこと、また引きこもりに関わる重大事件が起こった事や、内閣府の調査により40歳以上の引きこもりが61万人と推計されたことなどによって、マスコミがこぞって引きこもりの高齢化と8050問題について報道するようになりました。
8050問題の定義とは?
8050問題の定義については、厚生労働省の”地域包括支援センターにおける「8050事例」への対応に関する調査”にて、定義されています。
その定義は以下の通りです。
65歳以上の親と、仕事に就かず親の収入で生活している40歳以上の子どもが同居している世帯
定義では、対象世帯について定めていますが、現象としては、”ひきこもりが長期化し、親が70代や80代と高齢になった末に、介護や困窮など複合的な課題を抱えるようになった事例”としています。またその他にも、年代を少しずらして7040問題と言われたり、最近では科学の発達により寿命が延びており、将来的には9060問題になるとも言われています。
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引きこもり高齢化の原因は?
引きこもり高齢化の原因は様々な側面が原因となっていますが、私は就職氷河期によって社会との繋がりを絶たれ、支援なくそのまま長期引きこもりとなったことが原因のいったんとして挙げられるのではないかと考えています。
内閣府の生活状況に関する調査によると、40~49歳の年齢層では、60%以上が10年以上の引きこもりになっています。この年齢層は、ちょうど就職氷河期にあたる世代です。
引きこもりの人数が100万人へ。内閣府統計から見えた引きこもりの実態とは?
就職氷河期世代は、ロスジェネ(ロストジェネレーション)世代ともいわれています。直訳通り、失われた世代ですね。日本は新卒一括採用の慣例があり、このロスジェネ世代は新卒の機会を逃し、政府からの支援もなく、置き去りにされた世代、という意味です。
なお、同調査によると、引きこもり状態になったきっかけの上位は以下の通りです。
平成27年度
- 1位・・不登校
- 2位・・人間関係がうまくいかなかった
- 3位・・就職活動がうまくいかなかった
平成31年度
- 1位・・退職した
- 2位・・人間関係がうまくいかなかた
- 3位・・職場になじめなかった
平成27年度の調査では、3位に就職活動がうまくいかなかった、が入っています。対して、平成31年度は退職した、職場になじめなかった、という理由が入っています。
就職に失敗し、景気が良くなったのをきっかけに、就業したものの、うまくいかなかった。そんなストーリーも見えてくるのではないでしょうか。
また現在厚生労働省によって行われている引きこもり対策推進事業ですが、開始されたのは平成21年です。対して、就職氷河期は平成3年頃からとなっています。
社会が引きこもりに目を向けた時には時すでに遅し。
当事者は社会に関わっていくパワーをなくし、そのまま抜け出せずに長期引きこもりになってしまった、ということも考えられます。
世帯構造の変化の影響は?
また、社会構造的に、世帯の形態が変化し、より孤立しやすくなっているという意見があげられることがありますが、実際はどうなっているのか。
厚生労働省の国民生活基礎調査をもとに調べてみました。。ここ30年の世帯数の変化で見ると、3世帯世代が15%から5%へと3分の1にへり、単身世帯が増加しています。
単身世帯の増加を考えると、孤立化はしやすくなっているといえますが、8050問題の対象である、未婚の子と夫婦のみ、という世帯は減少しています。これは推測ですが、8050問題にすでに直面し、両親が他界し、単身世帯になった引きこもりがすでに相当数いる可能性も考えられると思っています。
また、そもそも引きこもりの背景には、精神疾患や発達障害などの関りも指摘されています。最近こそ、精神疾患や発達障害への理解は広まってきましたが、今長期引きこもりになっている方が就職活動をしていた当時などは、精神疾患への理解は十分ではなかったといえます。そういった側面も引きこもりの長期化に影響している可能性があります。
8050問題の事件・事例
実際、高齢の両親が他界したものの、社会とのつながりがないために警察などにも通報できず、親の死体遺棄を行い、親の年金で生活をしていた、という事例が出始めています。
福岡市の住宅で冷蔵庫の中から高齢夫婦の遺体が見つかり、80代の両親の首を絞めたとして8月26日に殺人罪などで起訴された次男(59歳)は、約40年にわたり、ひきこもりがちだったという。筆者は、新聞社からの取材で、この8050世帯の悲劇のことを初めて知った。
【福岡・冷蔵庫2遺体事件】8050問題介護 ひきこもり状態の子に周囲ができること
2019年2月1日、横浜地裁の604号法廷。横浜市金沢区の自宅で、2018年1月に亡くなった当時81歳で介護中だった母親の遺体を約10カ月にわたって放置したとして、2018年11月29日に死体遺棄容疑で逮捕された
8050問題「親亡き後の死体遺棄事件」を生む悲惨
迫りくる、8050時代に必要な支援と解決策とは
すでに8050問題は私達の目にみえる形で表れ始めています。それでは、これから一体どのように対策をとっていくべきなのでしょうか。
私は、まず有効な施策としてアウトリーチが必要だと考えています。引きこもりは2重の孤立を引き起こすといわれています。
それは「当事者と社会からの孤立、そして家族と社会からの孤立」の二つの孤立です。
引きこもり、そして引きこもりを抱えた家族は、外に相談することができず、抱え込んでしまうことが少なくありません。引きこもり本人、そしてその親や兄弟や姉妹、それぞれが悩みを抱えながら、世帯としても孤立してしまうのです。
引きこもりの方は、そもそも人間関係が得意でなかったり、自分の居場所が社会のなかにあるということを感じられなくなっています。
そしてその家族は、引きこもりを生み出したという恥ずかしさや、自分達でなんとかしなくてはという気持ちで、孤立を深めていきます。
各支援機関はこうした引きこもりの特性を十分に把握し、来訪を待つのではなく、積極的に関わっていく姿勢が必要でしょう。
厚生労働省では、昨年度より、8050問題など、複合的な地域課題に対応するため、包括的な支援を行っていくとした方針が打ち出されています。
本当に必要な人に、必要な支援が与えられていくことを願うばかりです。
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民間のリソースも活用していくべき
また、当事者同士の関わりも非常に有効だと思います。当事者やその家族同士の交流によって、心理的なケアだったり、仲間の経験や知識を共有することができます。
いまは全国の各地に当事者の会などがありますので、お近くでそういった会がないかを探してみるとよいでしょう。また、ネットの掲示板などを活用してみることもお勧めです。
終わりに
8050問題は、引きこもりだけでなく、普通に日常を起こっている人にも十分に起こる可能性があることだと思います。大切なことは社会全体が問題を認識し、まず関心をもっていくことです。
誰もが問題の当事者なんだ、そんな気持ちで関心を持っていただければ嬉しいです。それでは、今日もお読みいただき、ありがとうございました。