持続可能な精神第2回インタビュー「休む時は休む」

この生きづらい世の中で、持続可能な精神のコツを様々な方にお伺いするこの企画「Sustainable Mentality」、略してSuMty。記念すべき第2回は、仙台と東京を行き来しながら、アウトソーシング業を営んでいるクマガイカナさんにお話を伺いました。

カナさんのプロフィール

高校卒業後、進学も就職もせずニートで引きこもり7年。 その後25歳より会社員として働き始めるも体調不良でうつ病になるも、現在は法人の代表取締役社長を務めるまでに回復。小学4年生の息子の母でもある。

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病名:うつ、職業:社長

ジョジョ:カナさん、今日はよろしくお願いします。始めから突っ込んで聞いちゃいますけど、カナさんのこと色々調べてみたものの、わからないことが多くて。今は何か精神的な疾患を抱えながら働いてるんですか!?

カナさん:はい.うつ病で通院しながら社長をやっています。

ジョジョ:え・・、凄いですね。治ってから社長っていうパターンは聞いたことありますけど、通院しながら社長って、始めて聞いた気がします。それって、ちょっと辛すぎません!?

カナさん:もちろん、大変な時もありますけど、周りの人の力を借りながらなんとかやってます。

やりたいことは何でもやらせてもらえた生活が一変・・

ジョジョ:なんとかではなく、きっと十二分にやっている気がしますが!ではなぜカナさんがうつ病を抱えながら社長をすることになったのか、どのように今に人生が繋がっていくのか、詳しいことをお聞きしてもいいでしょうか!?

カナさん:はい!もちろんです。私の経歴について、話をさせていただきますね。まず私の家族ですが、4つ上の兄がいて、父、母と暮らしてました。両親は事業をしていて、それなりに裕福な家庭でした。欲しいものが買ってもらえないということもほとんどなく、やりたいと思ったことはなんでもやらせてもらえた記憶があります。

ジョジョ:幸せな家族の記憶ですね!

カナさん:そうですね。自分でも恵まれていたと思います。それが中学生のころになると、両親の事業が上手くいかなくなって、生活が一変しました。

両親も大変だった、今自分が大人になって、大変だったの一言では済まないくらいの状況だったと思うのですが、それまであった家族との関りがほとんどなくなってしまって。

ジョジョ:なんと、、ドラマみたいな展開ですね。関りがなくなってしまったというのは、ご両親は働き詰めでほとんど家にいなかったとか?

カナさん:家にはいた記憶があるのですが、関わり方が変わってしまいました。それまで家族旅行に行ったり、従業員の方と出かけたりしていたのに、そういったことがほとんどなくなって、綺麗な家からボロボロの家になったというか、子供からみてもわかりやすく、うちってちょっと不味いんだな、という感じに変わってしまいました。

積極的な優等生から、自信がなく消極的な自分に

ジョジョ:子供心にも、自分の家が貧乏になっちゃったというのがわかるくらいの変化があった?

カナさん:そうですね、その頃から自分自身も全く変わってしまって。それまでは学級委員をやったり、友達を家に呼んで遊んだり、自分で言うのもなんですが、優等生でした。でもその頃から全然自分に自信がなくなっちゃって。

ジョジョ:そうだったんですね。それはやっぱり家庭での影響が大きかった?

カナさん:そうですね。やはり子供なりに家庭の変化に戸惑いがあって、どうしていけばいいのかな、っていう気持ちで。早く大人になりたい、守られる自分でいたくない。その頃はそんな想いばっかり持っていました。ただ、現実は全然逆で、進路も自分で行きたいなと思うところも諦めちゃって。

ジョジョ:自分がなんとかしなきゃ、力になりたいという思いがあったのですね。進路を諦めてしまったのは、金銭的な面が原因ですか!?

カナさん:いいえ。そもそも自分のやりたいことに向かって頑張っていくパワーがなくなってしまったんですよね。ただ、高校にはちゃんと入って、一応専門的な学校にいって、頑張れば色々資格とかもとれたりする環境だったんですけど、その気力もなく、バイト漬けの毎日でした。クラスメイトからも卒業を疑われるぐらい、落ちこぼれでしたね。

自分史上、一番だらけた毎日を送る

ジョジョ:今のカナさんからはまったく想像できません。では卒業後はどのような進路だったんですか?

カナさん:ありがとうございます(笑)ファッションが好きだったので、ファッション関係の学校だったり、絵が好きだったのでそういった道も探してたんですけど、駄目だといわれてそこで諦めて。

今だったら色々と他の方法も探したと思うんですが、当時はそんな気力もなく、一言でいうとニートになりました(笑)それまでの自分では考えられないくらい、自分史上、一番だらけた毎日でしたね。

ジョジョ:小学生時代から考えると凄い落差ですね。そこからどうやって立ち直っていったのですか!?

カナさん:当時は自分でもこのままじゃ不味いと思ってたんですけど、何かをしようとか、頑張ろうという気力も自信もなくて、動けなくて。でもその頃お付き合いしていた人がいて、結婚も考えていたので、そろそろ働かないと不味いという気持ちもあって、25になってやっとは仕事を始めるんですよね。

ジョジョ:おお、良かった。何もしてない時間から動き出すのって凄いパワーがいりますよね。そこから今みたいなスーパーカナさんの誕生って感じですか!?

カナさん:いえ、始めは他者貢献しようとか、仕事を頑張ろうって気持ちは全然なかったんですよね。でも、息子を生んでから仕事に対する姿勢が変わりました。

赤ちゃんって、母親じゃなきゃ駄目じゃないですか。息子は特に私がいないと凄い泣いて、「ああ、自分がいないとこの人は生きていけないんだ」と心から思えたんです。家族にも、友達にも、夫にも、そんな感情は持ったことはなかったんですが、子供が出来たことで、人への考え方が変わったというか。

仕事をして認められる自分が楽しくて仕方なかった

ジョジョ:母性と共に、人の捉え方が変わったんですね。

カナさん:はい、本当にそうなんです。そこからは、ただやることやっていればいいや、では面白くなくなってきて。今思えば凄い生意気かもと思うんですけど、ここ駄目ですよね!ってダメ出しとかするようになって。

そこから色々評価もしてもらうようになって、仕事って楽しいなと思うようになりました。母親ではない自分自身を認めて貰えたことが凄い嬉しくて。その時期は朝から夜まで、1日中会社にいました。

ジョジョ:凄い!大変身ですね!そこから、また新しいキャリアに進んでいくわけですね。

カナさん:はい。その後、他の会社に誘われて転職することになりました。当時は本当に1日中仕事をしていて、子供もいるしライフスタイルも変えたいなと。

新しい仕事は営業職で、自分にとってはまったくやったことがない仕事でしたが、頑張って取り組んでましたね。

ある日突然、起きれない朝・・

ジョジョ:経験がない環境で大分緊張もしたんじゃないでしょうか!?

カナさん:そうですね。本当に始めてのことで上手くいかなくて。ちょうどそんな時、虫垂炎になってしまって、痛み止めを飲んでも全然効かないんですよ。

それでアポもキャンセルすることになったりということが続いて。手術は無事に終わったんですけど、その後婦人科の病気が発覚して、慢性的な腹痛がするようになって。それでも頑張ってたんですけど、ある日突然起き上がれなくなっちゃって。

ジョジョ:それは・・、完全にうつですね。それも重度の。

カナさん:そうなんです。で、そういう時に会社としてはやっぱり労災にはしたくないという雰囲気になるじゃないですか。周りも腫れ物のような扱いで。それで、なんとなく自分ってやっぱり使い捨てなのかなと思ってしまって・・。そこから1年間休職して、回復できずに退職になって。

ジョジョ:よくあるコースですね。休職中はどのように過ごしてたんですか!?

カナさん:なりたての頃は、それこそお風呂にも入れないし、着替えもできない。ご飯も食べれなくて、本当に記憶がないような感じで、10キロ痩せました。でもだんだんとご飯も食べれるようになって、少しずつ元気を取り戻していきました。

うつの治療って、よく好きなことをやろうというのがあると思うんですけど、私はもともとファッションとかメイクが好きで、友達のコーデをしたり、服装を褒められることもあったりして、周りからインスタグラムで発信してみたらって言われて、そこからインスタに投稿するようになったんですよね。

私、社長になる!

ジョジョ:面白い。そんな活動もしてたんですね。Twitterでしか知らなかったので新鮮です。

カナさん:実はそうなんです。それで、自分の好きなことなんで、やってて楽しいし、反応も貰えるようになって。フォロワーも増えてきて、インスタのお仕事なんかも貰えるようになって、凄い面白さを感じてました。

そうこうしているうちに、失業保険も切れる時期が近づいてきて、この先仕事どうしようかと考えたんですね。
私って、とにかく人に迷惑かけたくない気持ちが強くて、学校にほとんど行ってなかった時も、バイトは休んだことなくて。そんな性格なんで、仕事をして今後も誰かに迷惑をかけるなら、自分でやった方がいいか、と思って。

その時、ちょうどインスタにもショップ機能が付き始めて、自分のブランドでも作ってみようか、と思ってそのためにも会社作って社長になろうって周りの人とかに言ってたんですよね。そんな時、ちょうど知り合いの社長さんが人がいなくて困っているって話を聞いて、それで人を集める会社を作ろうっていうことで今の仕事を始めました。

ジョジョ:凄いですね!それまで、人材業界の経験などもなかったわけですよね?

カナさん:はい、全くありませんでした。でも挑戦してみようかなと。会社さえ作っておけば、インスタのビジネスもすぐに出来ると思ったし。

ジョジョ:本当に凄いですね。今はうつ病の調子はどうなのでしょう?やはり動けなくなることなどはありますか!?

カナさん:実は今も体が動かないって日は普通にあるんです。でも、そんな時は周りの人や両親に助けてもらったり、周りの会社さんにもアポをずらして貰ったりと、協力してもらってます。私自身が現場に出るわけではないので、それで何とか調整することが出来ています。

人に迷惑をかけて生きる

ジョジョ:理解ある人達が周りにいてくれてるんですね。それはとても心強いですね。何かメンタル悪くならないために気を付けてることはありますか!?

カナさん:ないです。というか、メンタルってどう気を付けていても悪くなる時は悪くなるんですよね。なので落ち込む時はむしろとことん落ち込むようにしています。

確かインドのことわざだったと思うのですが、凄く好きな言葉があって、「あなたは人に迷惑をかけて生きているのだから、人のことも許してあげなさい」って言葉があるんですね。だから、私も休む時は休むし、周りの人にもそうして欲しいと思っています。

ジョジョ:凄い、なんか考え方がまるっきり変わったんですね。以前は周りに迷惑をかけたくないという気持ちだったのに、今はそれも受け入れているという。

カナさん:そうですね。今は迷惑をかけてしまう時は仕方ない、そう考えることができています。

ジョジョ:以前は他責思考という形だと思ったんですが、考え方は本当に変わったんですね。

かなさん:そうですね。どうしても動けない時は、自分を優先するようにしています。それに、周りの方も助けてくれて、周りの人に感謝をしながら、なんとかやっています。

ジョジョ:ありがとうございます。あと一つ気になることがあって、Twitterに「人が死なずに済む社会を作る」と書いていると思うんですけど、身近な方でそういった経験がおありなんでしょうか!?

かなさん:そうですね。東日本大震災で亡くなってしまった友人も、自ら命を落としてしまった人も、病気でなくなった人もいます。どうしてこの人が死ななきゃいけないんだろう、って思ったり、自分自身も、消えたいと思ったこともあった。

人ってどうしても死にたいと思ってしまうこともあると思うんですけど、そういう状況を出来るだけ作らないような社会にしたいと思ってるんですよね。

ジョジョ:カナさん自身はこれまで自分で1番死にたいと思っていた時期とはいつになりますか!?

カナさん:やっぱり一番うつが酷い時ですね。

子供の虐待のニュースとか、出てくることもあるじゃないですか。そういうニュースって、私にはチャンネルを変えるほど、耐えがたいニュースなんですよね。子供の虐待って、貧困も原因になってるじゃないですか。そう思ったら、息子に保険金でも残して死んだ方がましじゃないかって思ったこともありましたね。

まずはゆっくり休むことを大事にして欲しい

ジョジョ:そんな辛い時期を乗り越えて、今のかなさんがいるって感じなんですね。今、同じようにうつで苦しんでいる方にメッセージをお願いしてもいいですか!?

カナさん:今は本当に希望が持てないかもしれないけど、明けない夜はないです。あなたを必要としている人はきっといるし、これからのためにまずゆっくり休んでください。とにかく自分を大切にして欲しいと思います。

ジョジョ:ありがとうございます。カナさんからの言葉に勇気づけられる人、きっと沢山いると思います。今日はお忙しいところ、お話を聞かせてもらいありがとうございました。

カナさん:ありがとうございました。

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